24人が本棚に入れています
本棚に追加
その次の日の朝、ミーティングが終わって自分の席の戻ろうとした時。
「朝宮さん、ペンケース落としましたよ!」
「あっ、すみません。ありがとうございます!」
すれ違った時に、紫のペンケースを愁次の前に落とす。
この時は、愁次も違和感を覚えなかった。
しかし、ここから彼も気づき始めることになる。
また次の日も。
「朝宮さん、ヘアゴム落としましたよ。」
「あっ、ごめんなさい!」
二階から三階への階段の踊り場ですれ違った時。
更にその次の日も。
「朝宮さん。メモ帳!」
「はっ!私、何しているのかしら…。」
給水室ですれ違った時。
その更に次の次の日も。
「朝宮さん、プリントが落ちましたよ!」
「朝宮さん!」
「ファイル落としましたよ!」
「朝宮さん、これ!」
「シャーペン落としてますよ!」
「朝宮さん!」
「朝宮さん、ポケットから!」
「朝宮さん!グミが目印みたいに落ちてる!」
「朝宮さん!」
「朝宮さん!」
「朝宮さん」と「落ちましたよ」を連呼して一週間。
愁次の喉と腰は仕事とは別の所で疲れ切っていた。
あの落とし物を拾ってからどのぐらい連呼したのだろう。
すれ違うたびに発生する朝宮の落とし物イベント。
ゲームで例えるなら、これはバグに過ぎなかった。
最初のコメントを投稿しよう!