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「は〜ぁ〜。」
「どうしたんだよ…?死んだような顔をして。」
デスクにうつ伏せになっている愁次のところに、池垣がやってきた。
「最近…いや、毎日のように俺の前で朝宮さんがよく落し物をするんだよ。」
「え、朝宮さんが?」
池垣は、目を丸くしながら朝宮がいる方向を見る。
彼女は、相変らず人に囲まれて愛想笑いをしていた。
「いや、それはないな。」
「何でそう言い切れるんだよ?」
愁次はデスクから顔を上げ、池垣の顔を見上げる。
「だって、あの完璧な朝宮さんだろ?物を落とすところなんて、誰も見たことないと思うぞ。」
「え?」
彼の言葉にポカンとした。
物を落とす彼女を見たことがない?
愁次は、池垣と同じく朝宮がいる方に視線を向ける。
確かに、よく物を落とすような感じには見えない。
しかし、何故自分の前だけ物を落とすのか。
愁次の頭の中は疑問でいっぱいだった。
その様子を眺めていた池垣は、深いため息を漏らす。
「若郷、お前は分かってないな。」
「何がだよ?」
「いーや、何でも。」
池垣の言葉に、愁次は首を傾げた。
「理由を知りたかったら、直接朝宮さんに聞いてみな。」
そう一言残し、池垣は愁次の前から去っていった。
取り残された愁次は、再び朝宮に目を向ける。
友人と談笑している彼女は、どこを見ても変わったこと様子はない。
だが、物を頻繁に落とすのはとてもおかしい。
「明日、あの作戦で聞いてみるか。」
ある作戦を思いつき、愁次は理由を聞く決断をしたのだった。
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