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後日談。
「で、結局なんだったのよ?」
冬休み明けの騒がしい朝の教室で、隣の席から睨み付けられた俺は、ことの顛末を簡単に説明すると、
「ふうん。やっぱりあんたを待ってたんじゃない」
「いまの話のどこをどう解釈したらそうなるんだ? 和衣でもよかっただろ」
「あたしが言うと相談じゃなく占いになっちゃうからね。あんたくらいがちょうどいいのよ」
俺くらいってどれくらいだよ。
「でもさ、巴。家庭の事情はそれぞれあるものね。――あんたも、ほら、悩んでいたらいいなさいよ。弟さんのことも、あんた自身のことも。あんたって正直あんまり心が読めないタイプなのよ」
「へえ、それはいいことを聞いたな。俺が嘘吐いてもわからないってことか?」
「嘘ならわかるけど。なんというか、あんたの場合、小さな心の動きまではわからないのよね」
そのとき、教室の後ろの扉が静かに開く。
時刻はHR開始の五分前で、規則正しくその時間に現れたのは冬月だった。
彼女は自席にむかいながら、座っている俺を見つけると微笑して、そのレアな表情を見た和衣とクラスメイトたちがその意味を想像して騒ぎ立てたのは、停学になったことよりも面倒だったことを、ここに付記しておきたい。
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