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アメリカ留学 1
──6年後。
雷亜が日本からアメリカへ飛んできたその日。
従兄弟の麻生達也が空港まで、雷亜を迎えに来てくれた。だが、ちっとも歓迎されていないのは表情で直ぐに分かった。
「学校で、俺とお前が親類だってこと、誰にも言うなよ」
第一声からそんなことを言われ、雷亜は面を食らった。
叔父の雷亜に対する態度も冷たかったが、その息子である達也の態度は、叔父に輪をかけて酷かった。
雷亜が達也に恨まれるような何かをした訳ではない。だが、雷亜は叔父一家から嫌われていた。
その一つの理由として、叔父の姉であった母が、酒癖の悪い父の立ち振舞いについていけず、心を病んで自ら命を絶ったからだ。
その日以来、叔父一家と会うことは一切なくなった。
そして、6年が過ぎ、雷亜が高2に進級した頃だった。
今度は父が自らガソリンを被って焼身自殺を図った。
父は双極性障害を患っていたから、いつかはそんな日がやって来るのではないかと覚悟はしていた。が、実際にやって来ると、想像以上に心が痛かった。
父方の親族は居なかったため、雷亜は施設に送られる事が決まった。
そんな時に、何の気紛れか、ふらりと叔父がやって来て雷亜を引き取ってくれた。
何だかんだ言っても親族なのかと、ほっとしたのも束の間、
『お前を引き取ったからって、お前たち親子がしてきた勝手を、許した訳ではない』
と、きっぱり言われてしまった。
ならば、何故雷亜を引き取ったのか……?
家族の居ない広い屋敷で、叔父と顔を合わせても、叔父は面倒臭そうに顔をしかめるだけだった。そして、遂には──、
『お前も達也と同じくアメリカに留学しろ』
と、まるで厄介払いのようにアメリカ行きが決まった。だが、これで叔父との気まずい生活もなくなるので雷亜はほっとした。
しかし、実際には遠いアメリカに来ても、叔父と同じ価値観の達也がいるから、やはり雷亜にとってはどっちもどっちだった。
「雷亜なんて名前もマジで最悪だよな。英語でライアったら、〝liar〝 〝嘘つき〝じゃねぇか。顔の傷は汚ぇし、髪はボサボサだし、チェックのネルシャツなんか着て、マジで俺に近付くなよ!俺までNerdと思われちまうからな!」
雷亜は唖然とした。二言目には、これである。
黙っていれば黒目のくりくりした可愛い鼬のような小顔をしている癖に、達也の言うことはきつかった。
達也と比べたら、態度だけで口に出さなかった叔父の方が少しだけ増しだったかもしれない。
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