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一通り奇妙な動きが治まると、男性は雷亜を指差し怒鳴った。
「おい!お前!なんだ、その体!!可愛い顔して脱いだらそれってヤバイだろっ!何かスポーツでもやってたのか?!」
「い、いえ……、特に……」
「嘘をつくな!上腕二頭筋や腹筋、三角筋まではっきりしてる奴が、体鍛えてないわけないだろ!」
「ええ、まあ……、父が死ぬ前までは父のトレーニングに付き合ってました。ただ、それだけですけど……」
武道は一般的にスポーツに入るのだろうか?
そんな疑問が脳裏を過りながら、雷亜は受け取ったブルゾンに袖を通した。
その間も目前の男性はジロジロと雷亜の体を見てくるので、何だが落ち着かなかった。
「そうか、そうか、トレーニングで鍛えたのか。いい体してるなあ。やっぱ好みだわ~」
と、にやけながら雷亜の腹に触れてきたので、ひゃあー!と変な声を出してしまった。
「な、な、何をするんですか!変なところ触らないで下さい!」
別に腹を触られるのが駄目という訳ではない。触り方がなんだか妙で寒気がしたのだ。
「いいじゃねえかよ、別に減るもんじゃねえし」
今度は馴れ馴れしく肩を抱いてきて、上から、「ほお、乳首もピンクで小さく可愛いんだなあ」なんて言われ、慌ててブルゾンのジッパーを上げた。
雷亜はキッと男性を睨み付け、
「上着を貸して頂けたのは有難いのですが、人の体をまじまじと見るのは失礼ですよ」
と、言ってやった。乳首の色までじっくり見られるのは流石に恥ずかしい。
そして、雷亜は不意に大事な事を思い出した。
「あ、そうだ!こんなことしている場合じゃない!遅刻だ!!」
慌てて自転車に股がり、
「あの、明日も同じ時間、ここを通りますか?」
と、訊いた。ブルゾンを返さなくてはいけない。
「おっ!もしかしてお前、留学生か?」
「はい。この先のサウス・マウントユニオン高校です」
目の前の男性が指を鳴らした。
「ナイス!俺もそこの生徒だ。俺の名は王宇辰よろしくな!」
「え?」
──この人、同じ学校?!
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