ある日の家畜と吸血鬼

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ある日の家畜と吸血鬼

 藤崎課長に言われたデータを探しに資料室に来ると、午後の日が射し込んでいて冬の割に部屋の中は温まっていた。  猫みたいに日向ぼっこしたら気持ちいいだろうな……。 「ふわ……」  思わず欠伸が出た時、ドアが開いた。 「課長?」  彼は険しい表情で、後ろ手にドアを閉めると、わたしの方につかつかと歩み寄って来る。  その勢いに思わず後ずさると、ファイルの棚を背に追い詰められた。  ばん、と彼がわたしの顔の横に手をつくと、ふわりと甘い香りに包まれる。 「なんでここに来させたか分かってるか?春ちゃん」 「資料探しじゃないんですか」 「それは口実だ。けど不要なわけじゃないから後でちゃんと持って来なさいよ」 「はい」 「……さっき、営業部の奴が前借りの件で来てたな?」 「……締日ギリギリになるんだけど大丈夫かって確認に。いいですよ、って言いましたけど、ダメでしたか」 「そうじゃない。それなら聞こえてるんだからその時に言う。じゃなくて……前に話したな?俺らが関係持った女は、どういう原理か知らないけど、他の男にも目つけられやすいって」  わたしは頷いた。  異質の体液の摂取の影響とかそういう理屈かも、って難しいこと聞いたけど。  ていうか、体液って……。 「聞きましたけど、それとその前借りの件とどういう関係が」 「『大丈夫ですよ。先に声かけてもらってありがとうございます。助かります』って、イイ笑顔見せてただろ」
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