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――当日、凛子はグレーのセレモニースーツに身を包んだ。
鏡の前で何度もおかしい所はないかチェックする。
聡は黒のスーツで。
そして主役の幸人は白の祝着。
久しくこんな格好をしたな、と凛子は感じる。少し太ったかしら?
結婚する前は、よくスーツにも縁があったが、こんな田舎暮らしではなかなかそんな機会はない。
「凛子、よく似合ってるじゃん」
聡が嬉しそうに言った。凛子は首に真珠のネックレスをかけながら、ありがとう、と微笑む。そしてベビーベッドの幸人を覗き込む。
「最後まで大人しくいい子にしてくれてらいいけどね〜。幸人、おりこうにしててね」
その時だった。ピンポン、と玄関がなった。
義母が対応しに2階から降りてくる。
「きたよー!!」
姫子の声だ!
凛子は心臓が縮み上がった!
姫子が今日来るとは聞いていなかった!
「ひ、姫子さんも来てくれるの?」
「あ? 仕出し屋が来るのを受け取る人が必要だろ? 凛子のご両親と一緒に帰ってきたらすぐ食べられるように準備係に呼んだんだよ」
そうなんだ……。
久しぶりの鬼の登場じゃない、と凛子は拳を握る。
「こんにちは。姫子さん、今日はありがとう!」
玄関で姫子を出迎えた。
「凛子さん、今日はおめでと。お宮参りの日、晴れてよかったね」
「姫子、入ってちょうだい。もうすぐしたら凛子さんのご両親も来るから」
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