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それは突然すぎる出来事だった。
掴まれた手を離された凛子はよろよろっとしながら履いていたサンダルを脱いでリビングに駆け込んだ。
しかしそこには、先程いたはずの姫子の姿が忽然と消えていた。
ちょ、ちょっと待ってください!と義母の声が聞こえて、バタバタっと輩3人がリビングに入ってくる。
「こらぁ!姫子!お前のことはもう分かっとんねんぞっっ!出て来いや!」
めちゃくちゃでかい声でそう叫んで3人は姫子を探し出した。トイレは開けられ、お風呂の戸も開けられ、大声で喚き散らす。
その声にびっくりしたのか幸人が泣き出した。
凛子は咄嗟に抱っこして輩から距離をとる。
その時だった。
┈┈┈┈ピンポン
……凛子の両親だ。
来たらしい。
なんてナイスタイミングなんだろう。
凛子は幸人を抱っこしたまま立ち尽くした。どうしたらいいんだろ…こんな状態で本人もいないなんて、この輩たちが納得して帰ってくれるわけ、ない。
「おまえさんたち、姫子に用か?」
そのとき、静かな義父の声がした。
「せや!お前は父親か!? 」
「姫子なら裏口から出てったぞ」
「あぁー!? 逃げたんか! ぶっ殺したる!」
そう言って3人は義父が指さした方へと飛び出して行った。まるで嵐のような3人に為す術もなく、聡も凛子も、義母もしばらく口を開けていた。
┈┈┈ピンポン
もう一度なる。
凛子は幸人を抱っこしたまま動けなかった。
かわりに聡が動いた。
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