1827人が本棚に入れています
本棚に追加
/308ページ
「信じてください。僕は政宗さんを裏切ったりしません」
「信じたいが……。俺はお前から信用される程いい人間じゃないからな…」
政宗はそう言うと、表情を曇らせてソファから立ち上がった。
圭が悪くないことは分かった。
だが颯馬に対して嫉妬心を抱いてしまい、このままでは圭に八つ当たりをしてしまいそうだ。
「………今日は事務所に泊まる」
「待ってください。こんな……しなくてもいい喧嘩みたいなの、したくないです」
「俺はな、お前のことが……大事なんだ。汚い手を使ってでも手に入れたいと思うくらい、初めて見た時からお前に惚れてた」
「初めて見た時って……僕が返済で事務所に行った時ですか?」
そうだと政宗は頷いた。
高校生だった圭が一人で事務所を訪れた時、たまたま接客で出ていた政宗は圭に一目惚れしたのだ。
「そんな前から……僕のこと、好きになってくれていたんですか?」
「いい大人が男のガキに惚れるなんて恥ずかしくて言えなかったが……。みっともないな……俺は今ヤキモチを妬いてるんだ」
政宗さんがヤキモチ……。
颯馬さんと僕とのことで……。
「何回も言いますけど、本当に颯馬さんのことはもう終わったんです。ヤキモチなんか妬かなくても大丈夫ですから…」
「……本当か?だが、俺の事を好きにはなってはいないんだろう?」
「それは………」
颯馬の時に感じたトキメキのようなものを、政宗に感じることは出来ていない。
だが、自分のことでヤキモチを妬く政宗のことを圭は好ましく思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!