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本当は向坂が齋藤を処分したのではないか。
政宗はその可能性を捨てきれなかった。
齋藤が居なくなってから、向坂もその行方を探しているようには見えたが……。もしあれが演技だとしたら食えない奴だ。
「お前のとこのお姫様も齋藤が死んでれば安心出来るだろうな」
「圭のことを気安くお姫様なんて呼ぶな」
向坂の軽口に対し、政宗はギロりと睨んで返す。確かに齋藤に再び狙われることは無くなる。だが、それで安心なのだろうか。
今こうして味方ヅラしている向坂だって、いつ圭を利用しようとするか分からない。その他にだって狙われるかもしれない。
「政宗、人を集めておけ。齋藤を埋めた奴らも動くかもしれん」
「分かった。ヤク絡みなら厄介なことになるな…」
ひとまず今は早坂に連絡して圭を守らせよう。全てに片がついたら……圭は安全な世界に返してやろう。
政宗は窓の外に目を向ける。
雨はまだ止みそうになかった。
「圭ちゃん、ちょっと組でトラブルがあってさ。今夜は俺と古田がここに泊まるね」
早坂が古田を伴って訪ねてきた時、圭は戸惑いながらも素直に部屋に二人を招き入れた。
政宗は早坂のことを信頼している。
その政宗が早坂を寄越したのだから、何か理由があるのだろうと思ったのだ。
「トラブルなんて……政宗さんは大丈夫なんでしょうか?」
「ボスは問題ないよ。念の為に俺達が圭ちゃんを守るけど、圭ちゃんは普通に過ごしてくれていいから」
「はい。ご迷惑おかけしますがよろしくお願いします」
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