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颯馬の元に戻りたいかと聞かれて、圭は頭を殴られたような衝撃に襲われた。
颯馬の元に戻りたいだなんて全く思っていない。政宗がどうしてそんなことを言うのか。
それは自分を厄介払いしたいからではないのか。
圭は俯いて泣かないよう堪えた。
泣いてしまったら話ができない。きちんと話すと決めたではないか。
「政宗さんは……僕を颯馬さんのところに戻したいんですか?もう、僕は必要じゃないんですか?」
「そうじゃない。ただ、アイツの元に居た方がお前が幸せになれるんじゃないかと思って……」
「僕の幸せをどうして政宗さんが勝手に決めるんですか?」
「俺は圭に幸せになって欲しいんだ」
できれば俺と幸せになって欲しい。
圭、俺と居たいって言ってくれ。
その言葉が聞けたら、俺は……。
「政宗さんは僕と一緒じゃ幸せになれませんか?」
「は?いや、そうじゃなくて……」
「僕は……政宗さんのこと…」
圭はもう限界だった。
政宗から遠回しに別れを告げられていると思い、堪えていた涙が溢れ出す。
例え別れを切り出されても足掻いてみようと決めていたが、実際にこうして話されると想像以上に辛いものがあった。
「圭、泣くなよ。泣かせたい訳じゃない。俺はただ……」
「それ以上、聞きたくないです……」
圭は耳を塞いでソファから立ち上がった。
別れようと言われたらお終いだ。その言葉だけは絶対に聞きたくない。
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