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「僕……別れませんから」
「え?いや、圭……」
政宗は自分も立ち上がって圭の腕を掴む。
圭の顔を覗き込むと、その顔は涙を流しながら悲しそうに歪んでいた。
こんな顔をさせたかった訳では無い。
借金の件は関係なく、俺と生涯を共にする覚悟があるのか確かめたかっただけだ。
それを、回りくどい言い方をしたばかりに圭は別れ話をされていると思ってしまったんだ。
「圭、落ち着け。俺だって別れたくてこんな話をしてるんじゃない」
「じゃあ何で颯馬さんのところに行けだなんて……」
「アイツのところに行けなんて言ってない。行きたいか聞いただけだ」
「行きたいわけ、ないじゃないですか!僕が愛しているのは政宗さん、なのに……」
圭がこんなに感情を露わにして怒っているのを政宗は初めて見た。
わんわん泣きながら大声で政宗に怒鳴る圭は、いつもの控えめで遠慮がちな圭ではない。
本気でぶつかってくる圭が愛おしくて、政宗はその小さな体をぎゅっと抱き締めた。
「何処にも行かせないで…。政宗さんには重荷かもしれないけど、僕は離れたくないです。政宗さんと一緒に生きていきたい…」
圭は高ぶる感情を抑えられなかった。
こんな風に誰かに我儘を言うのは初めてだ。
だが、政宗を失うくらいなら形振り構ってはいられない。
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