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「借金を帳消しにしてもらった義理から……俺と居てくれる訳じゃないんだな?」
「まだ分からないんですか?本当に愛してるって……言ってるのに」
「俺でいいのか?これからも大変なことが起こるかもしれないぞ?それに……」
強引に手に入れてから、最初に圭を抱いた時のことを政宗は忘れてはいない。圭だって忘れられるはずがないだろう。
抵抗しなかったとはいえ、あれはレイプ同然だった。一緒に暮らす中でその件について圭が蒸し返すことは無かったが、あれを本当に許してもらえるのだろうか。
あの時の俺は……圭という人間に心があって好き勝手にしてはいけないだなんて思っていなかった。
愛人なんて性欲の捌け口くらい軽くしか思わない、最低な人間だったんだ……。
「……最初の出会いからやり直してぇよ…」
「出会いから?ですか?」
「ああ。借金絡みとかじゃなくて、普通に出会って恋をして、それで結ばれるみたいなよ」
政宗がそんなことを言い出すとは思わず、圭はキョトンとした顔をしたあとくすっと笑ってしまった。悲しくて大泣きしていたのに、政宗が顔に似合わず可愛いことを言うので可笑しくなってしまったのだ。
「普通に出会うのは難しかったと思いますよ。そもそも借金がなければ会うことがなかったと思います」
「あ、そうか…。だよな。住んでる世界も違えば年だって離れてるもんな」
「借金に結んでもらったご縁だなんて、可笑しいですね」
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