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「マルコ、2年前に西のクレセント国とその近隣諸国で戦争が始まったらしいぞ」
私がバケットを頬張ってたら主様がそんな事を言ってきた。
こちらの世界、戦争が色んな所で勃発しては終結しているのを主様からよく聞く。
え?投獄されてる主様が、そんな情報を何処から仕入れてるかって?
勿論、ババ紙に決まっているじゃないか。
トイレットペーパーはこの世界には無い。新聞や要らなくなった紙がお尻の拭き物になっている。
ババ紙は1年以上前の物で、時系列ババラバでババ紙になって来るから、頭の中で整理しないと以下のようになる。
『その戦争、確か1年前にクレセント国が速攻負けたって、だいぶ前に聞きましたけど?』
「……あっ、そうだったか?色んな所で戦争が勃発してると、ごちゃごちゃになるな……。しかし、国名も覚えられないお前がよくそんな事覚えていたな」
嫌味を言いながらも私に指摘された事に、罰の悪そうな顔をした主様。
この世界の多々ある国名も覚えられない私が、答えられた理由は簡単だ。
会話が出来るようになって暫くして、主様からこうやってクレセント国が負けたと聞いた。ただ聞いただけなら右から左だったが、その時、私に忘れられない言葉を吐いのだ。
「お前は奴隷商に捕まってすぐ売れたのは幸せだったな。お前のように小さくガリガリな子供は、1年も経たない内に病気や体力の無さで死ぬのが普通だ。今は敗戦国の奴隷が沢山できるから、怪我や病気をしても手当もされず使い捨てされるのがおちだった」
そう言われてすぐに思い出したのが、私が世話していた兄ちゃんだ。
斬られた傷が沢山あったのに放置プレイだった。あのまま私が何もしなければ、栄養失調か怪我が悪化して死んでいた。
今思えば、斬られた傷や痣は戦争によるもので、あの兄ちゃんは何処か敗戦国の少年兵だったのかもしれない。
馬車に乗っていた他の人達も髪の色は勿論、肌の色も様々だった。
主様はあの時補足で私にこう言った。
ちょっとした病気は命取り。
ちょっとした油断は・・・・・・・・・・・・身を滅ぼすと。
最後のは、私に注意していたようだが、あれは主様自分の事を言っていたのではないかと今は思ってる。
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