1人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
オーフェンの泳ぎは速く、あっという間にマーマンの隠れ家から海に出た。
「遅いぞ兄貴!って、何連れて来てるんだよ?!」
カリスがビシっと私に指を指しながら怒鳴る。
「あのままセルシアの所に置いておいても仕方ないだろう。
彼女はリサだ。これからは名前で呼べ」
「何だよそれ?!人間の、女の味方をすんのかよ!」
徹底的な否定や非難は慣れている。男なんて皆そう。私の存在が邪魔なんだ。
「やっぱり私、王都に帰る!貴方達となんかいたくない!……離して!!」
オーフェンの腕から抜け出そうとしたが、彼は強く私を抱き締めた。
「カリス、謝れ!」
まるで獅子が吠えるようなオーフェンの怒声に私もカリスも身が竦む。
「リサも、王都に帰す訳にはいかない。
此処で俺達と暮らすんだ」
先ほどの怒声よりはいくらか落ち着いた、だけど逆らえない声に私は黙るしかなかった。
「その……悪かった。
なるべく仲良くなる努力はするよ」
拗ねた顔でカリスは私に手を差し出してくる。
「……」
無言でその手を握るとオーフェンが私とカリスの頭をくしゃっと撫でた。
「これで仲良しだな。
さぁ、そろそろ行こう。大カラス貝は孤島の岩壁に張り付いている。此処から少し泳がなければいけないから、リサは俺にしっかりしがみ付いてて」
「はいっ」
オーフェンの首に手を回すと彼はすぐに速いスピードで泳ぎ出す。
(あ…)
彼の顔を間近で見たけど…やっぱり美形だ。セルシアのような男らしさとは違い、妖しい色気を放つその顔に少し見惚れてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!