第一話『緑の双子人魚』

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オーフェンの泳ぎは速く、あっという間にマーマンの隠れ家から海に出た。 「遅いぞ兄貴!って、何連れて来てるんだよ?!」 カリスがビシっと私に指を指しながら怒鳴る。 「あのままセルシアの所に置いておいても仕方ないだろう。 彼女はリサだ。これからは名前で呼べ」 「何だよそれ?!人間の、女の味方をすんのかよ!」 徹底的な否定や非難は慣れている。男なんて皆そう。私の存在が邪魔なんだ。 「やっぱり私、王都に帰る!貴方達となんかいたくない!……離して!!」 オーフェンの腕から抜け出そうとしたが、彼は強く私を抱き締めた。 「カリス、謝れ!」 まるで獅子が吠えるようなオーフェンの怒声に私もカリスも身が竦む。 「リサも、王都に帰す訳にはいかない。 此処で俺達と暮らすんだ」 先ほどの怒声よりはいくらか落ち着いた、だけど逆らえない声に私は黙るしかなかった。 「その……悪かった。 なるべく仲良くなる努力はするよ」 拗ねた顔でカリスは私に手を差し出してくる。 「……」 無言でその手を握るとオーフェンが私とカリスの頭をくしゃっと撫でた。 「これで仲良しだな。 さぁ、そろそろ行こう。大カラス貝は孤島の岩壁に張り付いている。此処から少し泳がなければいけないから、リサは俺にしっかりしがみ付いてて」 「はいっ」 オーフェンの首に手を回すと彼はすぐに速いスピードで泳ぎ出す。 (あ…) 彼の顔を間近で見たけど…やっぱり美形だ。セルシアのような男らしさとは違い、妖しい色気を放つその顔に少し見惚れてしまった。
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