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探しに行っても
見つからない
何度も何度も
自分が通った道を歩いたけれど
見つからない
神社に行っても見つからない
お参りしたけど見つからない
かわいらしい巫女さんに聞いても
見つからない
かっこいい宮司さんに聞いても
見つからない
お寺に行っても見つからない
もちろんお参りもしたけど見つからない
頭がツルっとした
メガネのお坊さんに聞いてみた
「ああ、それなら……」
そう言って いくつかの帽子が入った平べったい箱を出してきてくれた
忘れ物が入った箱
横幅が80㎝くらいのわりと大きな箱
7~8個の帽子が入っていて
とっても期待したけれど
私の茶色い帽子はなかった
こんなに持ち主のいない帽子があるんだ
こんなに帽子を落とした人がいるんだ
彼らは帽子を探しているのだろうか
私の目の前に 持ち主のいない帽子があるのに
私の帽子は見つからない
ぼんやりと
その帽子たちを眺める
何度も何度も眺めて
私の帽子が現れないか
じっと見つめる
頭の中の私の茶色い帽子と
そこにあった帽子を比べる
どう見ても違う
じっくり眺めても
私の茶色い帽子ではない
それでも見つめる
私の記憶が間違っているのではないか
私の視界が間違っているのではないか
本当はその箱の中にあって
何かが邪魔をしていて
それで見つけられないだけではないか
そんなことがあってはいけない
だから 私は何度も何度も箱の中を見つめた
でも 茶色い帽子はなかった
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