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契約は、ままならない
白銀の髪を長く垂らし、同じく白銀の雲のような軽い衣を体の周りに漂わせ、手には笏を持った人物が1人、向かって左に立っている。
向かって右には、しっとりとした重い白髪を編み込み、凝った装飾の施された衣装を身につけた目の赤い人物が立っている。
左の人物が口も開かず話し始めると、その場にいた人は頭の中で声を聞いた。
「先の契約より1000年めにあたる今宵、龍と未藍の婚姻により、天と地と人の血の縁は完全なものとなる。我々は同胞である。この星で末長くともに栄えようぞ。」
その人物の前に龍は進み出てひざまづいた。
「天帝にお願いがございます。
天帝の子としてわたしと蓮は生まれ、わたしは天で育ち蓮は地で育ちました。
これからはわたしが地に、蓮が天にゆくことをお許しいただけないでしょうか。
未藍との婚姻は、わたしではなく蓮にしていただきたいのです。」
ひざまずいた龍とは対称的に蓮は立ったまま天帝の前に進み出た。
「俺と龍、2人とも天帝の子ならどっちが天でどっちが地かなんて関係ないだろう? 俺と未藍の婚姻でも構わないんじゃないか? 父さん。」
「蓮よ、おまえはもう天では生きられぬ。一度でも地の世界の物を口にしたなら二度と天へはゆけぬのだ。」
「それなら、俺は未藍と人の世界で生きてゆく。天へは龍が戻ったらいい。地へは他の誰かを送ってくれ。」
「おまえは人のように見えて人ではない。人とは寿命が違うのだから。天の血をひく者は人の世で1000年以上を生きることになる。未藍の寿命は人と変わらない。900年以上を1人で生きることに、おまえは耐えられるのか? 」
「じゃあ、2人で地の世界へゆく。そうすれば未藍も長く生きられるんじゃないのか? 地の神の子だぞ。」
天帝は小さく首を横に振った。
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