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神と人の契約
「わたしが……わたしが天に戻るとき、人を一緒に天へ連れてゆくことはできますか?」
龍も天帝にたずねた。
「天に人は来れぬ。」
龍の願望は断たれた。
華乃とたった3日しか恋人でいられなかった。例えわたしが人の世でカノと暮らしたとして、カノがいなくなった後900年以上を1人で生きるなんて寂しさに耐えられないだろう。
天帝が提案をした。
「蓮の言うとおり、未藍との婚姻の約束を果たすのは蓮と龍どちらでも善しとしよう。
どちらも人の世に残り、それぞれの想う相手と添い遂げればよい。そののち900年の間何度も妻を娶って子をたくさん産み、人の世に送り出せばよいではないか。
その子たちがいずれ地の神の子と交われば、我々の血はより1つになるだろう。」
蓮も龍も承服しかねる表情をする。
「そのためにも……地の神が人の世と行き来できる日が年に1度はあるとよいだろうのぉ。
これは人の王の役目であるが、人の王はおるのか?」
「まだ到着しておりません。」龍が応えた。
稗田が人の代表について願いでようとしたとき、暗闇の中から1人男が現れた。
龍とカノを除く人は皆んな驚いた。テレビでよく見かける大物議員がそこにいた。
大物議員は天帝の前にひざまずぎ、
「わたくし火明寿造は、御泊の祭礼の復活をお約束いたします。」と言葉を述べた。
「人の王はそなたか。
祭礼の復活だけでは足らぬのだぞ。我々の望みは天と地と人が血族となり人の世で繁栄することにある。神の血が流れている人がいることを公にし共に生きられる世にして欲しい。
わたしは鳥を遣わせ人の世を見てきた。なんと人心が乱れておることよ。神の血が流れた人とそうでない人が共存するには憎悪と悪意が多すぎる。」
「天帝の御子をお預かりし、わたくしには慈しみの心が芽生えました。神の血が流れた子たちも、そうでない子たちもわたくしにとっては大事な子。必ずや天と地と人がともに共存できる世を作ります。」
天帝は笏を掌に乗せた。笏が反時計回りに回転する。天帝は時をさかのぼり火明のこれまでの行動を見ていた。
「よかろう。そなたの言葉と行動に乖離はない。人の王と認めよう。1000年のちの世まで我々が繁栄するようにわたしも力になろう。」
「はっ。よろしくお願い申し上げます。」
人と神の契約は成立した。
「残るは、息子たちのことよ。」
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