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神様のウィンク
天の神様が自分の名を口にするたび、未藍はテレビでも観ているような気持ちになった。
自分のことを他人に決められてしまう番組。
(私っていったい何なんだろう?)
視線を感じて目だけで隣りをうかがうと、地の神様が私に向かってウィンクをしている。そうだった、この人は私の父かもしれないのだ。
5歳まで一緒に住んでいたみたいだけど、記憶はうっすらとしか残っていない。お父さんはとても優しくて、いつも私の我儘に付き合ってくれていた……ようなイメージ。母の幸せそうな顔に私も嬉しくなったという記憶。
天の神様が、蓮と龍に900年間にいっぱい結婚して子どもをバカスカ作れば? と提案した場面で、地の神様はウィンクをした。
(何が言いたいのだろう? ウィンクに意味はないのかな?)
天の神様と火明との契約が交わされた。私たちの話が再開される。
人の世界で私と蓮が結婚したら900年も蓮は独りぼっちだ。独りぼっちも可愛そうだが、私が死んだあと10数回も蓮が結婚するのはもっと嫌だ。そんなに結婚したら私のことなんてすっかり忘れてしまうに違いない。
未藍は地の神様に向け(助けて! お父さん!)とウィンクを送った。
地の神様は今度は優しい表情で両目を閉じた。(大丈夫!)そう言っているように思えた。
「蓮は地の世界に行って未藍と添い遂げるのか、人間の世界で添い遂げるのかをまず決めよ。未藍がいなくなったあとは、そのままその世界に留まるのだ。
龍も同じ。天の世界へ戻って生きるのか、人の世界で生きるのか決めよ。蓮と未藍が結ばれるなら、そなたの結婚は自由ぞ。」
蓮は決めていた。
「俺は人の世界で生きる。その後ひとりでも構わない。もともとひとりが好きだからな。」
龍は決められない。
天に行くならカノとは別れなければならず、人の世界でカノと添い遂げたとして900年は寂しい時をただ生きるのだ。
未藍の隣にいた地の神が声を発した。
「ひとつ、わたしにも提案があります。」
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