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1000年ともに生きるには
天帝のほうを向いていた全員の視線が、地の神へと集まった。
「提案というのは?」天帝がたずねる。
「坂下町の守神の席が空いております。誰に入ってもらおうか迷っておりました。龍様がお入りになってはどうでしょう? 守神として入るのは1人も2人も一緒ですから。そうすれば1000年は好いた人と共に過ごせるでしょう。」
龍は桜の木の陰にいるカノを目で探した。カノは山の神たちの間を抜け前に走り出ると「はい。」とだけ言った。
「地の神のご提案ぬ受けてもよろしいでしょうか? わたしはあそこにいる華乃という女性と一緒に坂下町の守神になりたいと思います。」
「承知した。龍と華乃は坂下町の守神となる。蓮は人の世で生きる。天と地と人の血はこれから1000年かけて混ざり合い共に生きることとする。これにて契約は交わされた。また1000年後に会おうぞ。」
天帝が言い終わると、生玉の銀河が閉じた。わたしたちはどうやら生玉の中にいたようだ。
いつの間にか天帝の姿は消えていた。
空を覆い尽くしていた天の巨人さんの姿も消えていた。
獣の臭いも消え明るさが戻ったがまだ周りの音は聞こえてこない。
その場に残った地の神が未藍に声をかけた。
「大きくなったな。お母さんに似てきた。」
「お母さんは、そっちの世界にいるの?」
「こちらから未藍を見守っているよ。御泊の祭礼が復活したら戻れるさ。」
「ほんとに? 御泊の祭礼をどう復活させるか分からないけど、絶対に復活させてみせる!皆んないるからきっと出来る!」
「あぁ、お母さんも未藍に会える日を楽しみにしているよ。」
蓮もこちらにやって来て、未藍の父に挨拶をした。
「お久しぶりです。先程は助け船をありがとうございます。未藍さんと結婚することになりました。これからは親族として未熟な2人を見守っていてください。」
蓮の丁寧な言葉遣いに未藍は驚いた。これは結婚の挨拶みたいだ。
「正しい答えを選んでくれてありがとう。蓮くんが地の世界で生きると言わないか、人の世界で妻を何人も娶ると言わないかとヒヤヒヤしていましたよ。
天帝は900年ひとりで生きると言っておられましたが、1人の女性、未藍だけと900年添い遂げられる方法がひとつだけあるんですよ。」
「どういうこと?」
未藍の目が嬉しそうに輝いた。
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