連休が明けて

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連休が明けて

 4連休が明けいつも通りの学校生活が始まった。昨日の黒い雲が嘘のように晴れわたり心なしか人々の表情が明るく感じられる。    稗田はその日学校を休んでいる。祖父が亡くなったのだ。昨日家に着いてすぐ病院から連絡が入った。“契約”の場に祖父がいたと感じたのは気のせいだったのだろうか。答えは分からない。父には何も見えていなかったらしい。祖父と一緒に成し遂げたのだと自分が思っていれば、それが正解だ。実際に助けてもらったのだから。  鈴木は稗田から連絡をもらい中庭に行った。4連休の前に稗田が置き忘れたというホウキとチリトリは中庭になかった。 (部長も真面目だなぁ)  鈴木は中庭の松が変わったことに全く気づかない。数ヶ月たって庭師が「この松変えました?」と先生にたずね「変えていませんよ。」と返事がきたので庭師も気のせいかとすぐに忘れてしまった。  奥宮蓮は自主退学したと先生がクラスメイトに報告した。もともと出席日数も足りていなかったし友達もいなかったので、蓮のことを卒業するまで覚えていたのは、ごく一部の女生徒だけだった。  商業科3年の二木(ふたき)龍は転校したことになっている。3年での転校に驚きはしたものの、父親の許しが出て東京に戻ったんだと誰かが話していた。  秋分の日から2週間ほどたって今度は1年の奥宮爽玄(そうげん)が転校した。飛島神社の宮司が解任され、飛島一家は坂下町にいられなくなったのだ。  4連休をさかいに坂下町の雰囲気は大きく変わった。飛島家の勢いは衰え、飛島側で威張っていた人の態度は急に小さくなった。  いままで言うなりになっていた人も、今度は全てを自分で決定する必要があり戸惑っていた。飛島家の支配から完全に抜けるにはもう少し時間がかかりそうだ。  鈴木も明るさを取り戻した。飛島家の嫌がらせがなくなり、クラスの皆んなも気兼ねなく話しかけてくれる。  稗田は忌引があけるとすぐ、オカルト研究部を引退すると報告した。  鈴木が幹事となりコーヒーショップねむの木でライトアップ作戦の打ち上げと稗田の送別会が開催された。
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