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叩きつけられた連判状
飛島神社では、最大のピンチが訪れていた。
氏子から宮司の爽達へ、解任要求が出されたのだ。
騒がしいオカルト研究部の活動に文句をつけてやろうと、爽達は受話器を持ち上げ、手を止めた。
「失礼します。」
玄関先に総代と氏子3名が立っていた。彼らはいつもと違う緊張感をまとっている。
通された応接間に正座し、爽達の妻が出すお茶を断った。
頭をひとつ下げ無言で若い氏子が巻物を広げた。応接間の端から端まで広げられた巻物には、氏子1人ひとりの名前が入り血判ならぬ印鑑が赤々と押されていた。
「これは……?!」爽達は自分に何かお願いがあるのかと思った。これだけの人数が署名したとなると大がかりな誘致か何かだと。
「ここに名前を書いた皆さんは、あなたに宮司を辞めていただきたいと思っています。」
「へぇ? 」変な声がでた。
「まるで意味が分かりませんね。」
「分かりませんか? 皆んなずっと我慢してきました。家族を守るため、この町で生活するため。我々はやっと気づきました。飛島さんの言うなりになるために生まれたんじゃない。もう、子どもらに同じ思いはして欲しくないって。
ある人から聞きました。飛島家が室町時代から続いてると言うのも嘘だそうですね。飛島は、御泊の人たちも誑して、祭りも何もめちゃくちゃにしたそうじゃないですか!
他にも飛島家に都合の悪い人は、みんな窓際に追いやられて精神がまいってる人もたくさんいるんですよ。」
「全くの言いがかりですよ。そんなことで連判状なんてものを作って! 首謀者は誰ですか? 証拠はあるんですか? 」
「証拠はあります。」
差し出されたのは録音機器だった。飛島関連の遺跡や施設が壊され爽達はイラだっていた。いつもはしっぽをつかませない爽達が、あきらかに脅しと受け取れる言葉を吐いた、そのときの音声が入っていた。
「この他にも、たくさんの人から証言が取れました。これを持って上に宮司解任を願い出ます!」
氏子らが帰った後、爽達はこの事態を何とかする方法を考えていた。もはやオカルト研究部に構っている場合ではなかった。
9月22日(秋分の日)am10:30
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