遅すぎた恋の話

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 友人代表の余興が始まった。  手拍子して盛り上げる。  その間もスマホのチェックは欠かさない。  メールの返信はない。  時刻は13時過ぎ。  一度吐き出してしまった言葉は消せない。  真っ暗な夜の宇宙の果てでプカプカと浮いている一文が見える。  導火線みたいに細い糸で繋がってるなら、今すぐこっちから火をつけてメールを燃やせるのに…  とても現実的ではない話。  両親への花束贈呈。  妹が両親に宛てた手紙を読む。周りからすすり泣きが聞こえる。  ずっと私の後をついて来た妹が嫁ぐ。  おめでたいことだけど、やっぱり寂しい。  うちの親に会いたいと言い出した時には驚いた。  だって一度しか、街中で偶然会って食事をしたあの一度だけしか会わせていない、妹と。  急展開とさらに根回し依頼。それも授かり婚なら納得というか…  メールの返信はない。  消けせないならもうさっさと読まれたいのに…  そして雰囲気に当てられたんだろ?って、お約束通り笑い飛ばしてほしい。  きっとそれぐらいのことはやってくれる。  彼が私に向ける同程度の信頼が私にもある。  それは時に邪魔だけど、それだけの時間を重ねたって証拠だ。  新郎新婦退場で披露宴はお開きとなる。  控室では「次はお姉ちゃんね」なんて声をかけられた。今日の私は心が広い。全然笑えるぞ。  妹からはブーケ。  人生は何一つ思う通りになんてならない。  その分、つくろうことが上手くなる。
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