音失者

5/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 少年は、不思議に思いながらも、安堵の息を漏らした。しかし、違和感は続いた。自分の肌を打ち付ける雨粒が一切音を立てないのだ。  何かおかしいと思い、周りを見渡していると、頭上の街灯が照らす水溜りは、赤く染められ、耳が無くなっている自分の姿を映し出していた…。  この町には、変な噂があった。なんでも、どこからか声が聞こえたと思うと、ピタリと聞こえなくなるという、怪奇で不思議な現象が起こる。  そして、その現象に襲われた人間は、音を落として失った、音失者(おとしもの)となるという…。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!