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街頭の真下に見えたそれは、すぐに消えてしまったため、少年は見間違いだと断定した。
街灯に近づいていくと、横目で街灯を追うが、やはり人影などは無かった。ため息のように、一息吐き捨てると、再び視線を前に向けて、タイヤを滑らせる。
『こんばんは…』
少年は、咄嗟にブレーキを絞った。振り返るが、後ろには誰もいない。暗闇の中、街灯がだけのその光景は、不穏な雰囲気を漂わせ始めた。
雨粒は地面を叩き、盛大な音を立てているはずなのに、その一瞬、時間が止まったような静けさを感じた。
少年は、確かに聞こえた誰かの声に、恐怖感を感じると、すぐに自転車で家へと向かい始めた。先ほどよりペースを上げて、帰路を進んでいくと、突き当たりにぶつかり、右折する。
慣れ親しんだ帰宅ルートに、再び見慣れぬ光景が現れる。
街灯の下には、さっきと同様に人影が見えた。前回と違う点は、その人影が姿を消さなかったことだ。
そのまま進むことはできないと感じた少年は、方向転換し、遠回りになるが、逆から帰ることにした。
しかし、驚くことに逆側にも同様の光景が姿を現した。振り返ったとしても、両側に人影がしっかりと見える。
唾を飲み込み、喉を鳴らすと、唾に雨粒が混ざって喉を冷やした。
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