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ブラバンの部室は音楽室の隣にある。バンドのキーボードは、オレらの担任で音楽教師、吹奏楽部と放送部の顧問でもあるキィ子先生。なのでオレらは音楽室をありがたく使わせてもらっている。グランドピアノのある練習スタジオなんて、滅多にないからね。
その音楽室からピアノが聞こえる。すごくピアニッシモで消え入りそうな音。キィ子はバッハとショパンとリスト(さま)しか認めない・・・と思っていたら、キャロル・キング風の弾き語りでオレらをノックアウトして、前回ではハービー・ハンコック風のファンキーなアドリブを披露した。まあ、バークリー音楽院に留学(ギタリストとのロマンス疑惑)してたから、ジャズは当然勉強してるはず。
そのキィ子が音楽室でひとり、静かにバラードを弾いている。まるでショパンのノクターンみたいに繊細な音。和音が半音でぶつかってるんだけど全然濁らない。冷たい夜空に広がるオーロラって感じ。
「“My Foolish Heart“・・・ビル・エバンスですよ」と、リンバちゃん。さっすが、ジャズには詳しい。
「綺麗な曲だね」と、M。
「左手のコード・・・どう弾いてるんだろう?」と、オレ。
オレはバンドではベースだけど、ピアノも弾くし一応このバンドのアレンジ担当。これは、ぜひ先生にご教示いただきたいところ。
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