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物騒な話
「ねぇ、アルベルト。アルバートは元気にしてる?」
ギュードンを皆で食べながら。母さんはそう僕に聞く。
「うん。元気だよ。今度は僕が留守番してアルバートにこっちに来るように言っておくよ」
「発明、忙しいの?」
「まぁね。父さんに追いつこうって頑張ってるんだ」
…実際は追いつけないのは分かってるけど。
父さんは母さんに会う前までずっと寝ないで、食事もロクに摂らずに発明に明け暮れてたらしいから。僕達2人がどんなに頑張っても無理…だろう。元からの頭の差もあるし…。
「無理は駄目よ。たまには遊びに出ていろんな人と交流しないとね。私が貴方くらいの時は夜更けまで遊びまわってたものよー」
「そ、そうなんだ…」
夜は夜型の人が発明品の生産をしているくらいかなぁ。僕は夜眠ってしまう方だからあまり夜は行動しない。
「カラオケとかボーリングとか、サンディアにもあればいいのにね。地球には24時間やってるお店なんかいーっぱいあるのよ」
「也美様、夜は寝てください。最近は物騒ですから」
物騒?
「何かあったの?」
「はい。最近夜になると吸精鬼が出るそうなんです」
きゅーせいき?なんだろうそれは…初めて聞いた。
「アルベルトは知らないかも?夜になるとスッゴイ美形の黒マントの男が後ろから近付いて来て…首筋を吸うんだって。吸われた人は力が抜けちゃって倒れちゃうのよ。ちなみに吸血鬼とは違うみたい。血は出ないし貧血にもならないらしいの」
そう母さんが説明する。…何となしにゼノンを見ると首を横に振る。
「俺は飯をちゃんと食いますよ。毎日也美様と美味しいご飯を食べてますからね」
と、尖ってる口を更に尖らせて言われた。
「だよね…ゼノンがそんなことするはずないもんね」
「当たり前です。それに俺、美形じゃないですから」
「もう、拗ねないの。ほら、唐揚げ食べて、ゼノン?」
母さんがゼノンの口にカラアゲを寄せるとパクリとゼノンは食べる。
「もぐもぐ…断じて、俺じゃないですからね。
そーいう怪人騒ぎは王宮兵に任せておけばいいんです」
「はいはい。ゼノンはアルバスと私の可愛い息子だもんねー。美形じゃなくて可愛い系だもんねー」
…そういえば、母さんとゼノンは初め苦労したらしい。どちらも最愛の人を失った悲しみと、どちらもお互いを父さんに任された複雑さ。日記にもあったけど、最終的に母さんはゼノンを正式に養子に迎えたみたい。僕の父さんがゼノンにとっても父なら、ゼノンは母さんの子でもあるし、僕達にとっては兄になるんだって。
「可愛いって…俺、もう大人です…」
尻尾を全開に振りながらそう言っても説得力はないなぁと思いながら…僕はご飯を食べ、ご馳走様をして片付ける。
(やっぱり実家はいいなぁ~。
でも、あんまり長居はしていられない。アレについて調べないと)
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