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地下室
母さんとゼノンと他愛のない話をして過ごし、深夜…母さんが眠ったのを確認してから僕とゼノンは庭にある地下室へと入る。
「此処なら母さんに話が聞こえないね」
「そうですね。それに、此処は盗聴される心配はないでしょう」
ゼノンが持っていた鍵で開いた地下室は中ががらんとしていて今まで誰も入った形跡がなかった。
「それで…父さんの遺言にあったセフィロトの樹について…教えて欲しいんだけど…」
「……」
ゼノンは考え込むように顎に手を置く。
「たぶん…あれの事だと思いますが…」
ゼノンはゆっくりと話始める。
「まだアルバス様が発明家になる前。国立学院の卒業試験でもある有名発明家の研究資料作り…この文献だけが、あるはずなのにないのです。アルベルト様も書いたでしょう?」
「うん。僕も父さんと同じ学校を出たから書いたよ」
あれがちゃんと書けないと留年しなくちゃいけないから、父さんの知り合いだった有名な発明家のとこに泊まり込みで勉強しに行った。
「博物館側はアルバス様の卒業研究の記録は学院のミスで消失してしまったと発表してますが…そんな事、あり得ません」
「そうなの?」
「はい。アルバス様の同年の方の卒業研究書も以前の物も全て厳重管理、そして全て書籍化しているのにも関わらずです。
…おかしいとは思いませんか?」
たぶんゼノンの言っているのは毎年売られるガーランド学院の卒業研究全書の事だと思う。その年の卒業生達が書いた卒業研究書は一つの本に纏められ、出版される。
確か…読んだことある。でも確かに父さんの所だけ…なかったはず。卒業生名簿には父さんの名前が入っているのに父さんのページはない。
「恐らく…アルバス様が卒業研究に選んだのが…国家機密に関わる、それだったのではないかと俺は思います」
なるほど。コネもなにもない父さんが急に発明家として成功したのも…それに関わったからじゃないのかな?
「なら…セフィロトの樹は国が隠している。つまり王宮の何処かにあるんじゃないかってこと?」
クリスティア様の王宮になら何度も行ったことがあるけど…それらしい物はなにもないはず。樹なんて呼べるものはなかったし…。
「十中八九、間違いないでしょう」
しかし…王宮となると簡単には忍び込めない。
「どうすればいいかなぁ…一度戻ってアルバートと話し合うかな」
僕一人じゃ無理だ。何にも思い浮かばない。
「もしかしたら…」
「少し待っていてください。心当たりがあります」
そう言ってゼノンは地下室から出て家に入って行った。
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