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食事はそれまで3回運ばれた。
その間、彼はずっと音だけ聴いてすごした。
食事は3回だったが、まる1日というには、時間的にあまりにも長すぎる気がした。
彼は食事をむさぼった。
パンもスープも酸っぱいような気がする。しかも腹には満たなかったが、死なないために、ただ食べていた。
それでも、ジャカードの入っている場所はわかった。
それともう1人の囚人。
音の聞こえ方からして、自分の隣、入り口に近い方に入っているのがジャカードで、その向かいが別の1人だろう。食事の時間は三者とも同じだった。
運動は欠かすことなく続けた。
摂取カロリーが少ないので、激しい運動は逆効果だろうが、ジャカードのように動けなくなっても困る。
毎日、決まったメニューだけを確実にこなした。
ふと、同室のアサダがやっていた変な体操を思い出した。
あれですら遠い夢のようだ。
彼はあの後、だいじょうぶだったのだろうか?
それと、ジョウガシマは?
知り合いだと言ってたな、どんな事情があったのだろう。それも、今は知りようがない。
唯一、ここには送られてこないのが慰めかもしれない。
排泄物の問題が一番の悩みになってきた。
食べる量は減ったが、出る物は出る。
排水口の蓋を外してみようとしたが、固くてどうにもできない。水がないのが辛い。
食事の時しか水が手に入らないので、軽い脱水症状が出て来た。
最後の手段で、出たものを飲むしかないか、何度かそこまで思った時、また階段を降りる音がした。
手前の房に、明かりが射しこんだようだ。
「清掃します。壁に寄って、後ろ向き、洗いますか?」
何か答えたような声がした、と、激しい水音が響き、しばらくはそれが高くなったり低くなったり続いていた。
「一歩右、前向いて」
また水音が響く。
次はその向かいの房の番だった。
サンライズはのぞける限り首を伸ばして様子をみた。
看守たちは同じ手順で、淡々と作業していた。
次はここか、あわてて下がる。
食事の時と同じく、上の窓から光が射した。
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