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少し時間があった。
だが、がちゃんと音がして、扉は大きく開け放たれた。
ぐいぐいと彼が曳いている。
久しぶりの感触に、はげしく目がまわる。
今倒れるな、オレ。
「鍵を渡して、他の部屋のも」
「これ一つで、全部開けられる」
ぼんやりと、彼が答えて鍵を差し出した。
「オマエはここに入る」
いやいやをしながらも、彼は入ってきた。
サンライズは、手早く彼の額から電灯を外し、入れ替わりに外に出た。
「鍵を閉めるが、大人しくそこにいるんだ、いいね」
「はい」
彼はずきずきする頭を抱え、先に階段を上って行った。
上にもう1人見張りがいるはずだ。
外は真っ暗だった。
それでも今までの暗闇から比べれば、お祭みたいな明るさだった。
彼は甘くて冷たい外気を胸に一杯吸い込んだ。
空気がこんなに美味いなんて今まで気づかなかった。
建物を回り込むと、ちょうど裏手に近い所にプレハブの詰め所がついていた。中でのんきそうにおむすびを食べている警備の相方を見つけた。
「食器は?」
ふり向かずに聞いてきたところに一言、キーを放つ。
「中身は、オカカだろう」
こちらも簡単に釣り上げることができた。
さびしかろう、と先ほどの男と同じ房に入れる。
後の1人がかけていた眼鏡を
「ちょっと借りる」
とむしり取った。
度が合ってないが、ややマシになった。
大変なのは、ここからだった。
まずジャカードの房を開けた。
むっと獣のような臭気が鼻を刺す。
頭痛もあって、ひどい吐き気を催した。
入り口でげえげえと吐く音を聞いたらしく、ジャカードが身を起こした。
巨大なモップの塊だ。
こんなのが同じ職場の人間とはとうてい思えない。
しかし一応聞く。
「……ジャカードか?」
口をきくのも、大儀そうだ。
「さん、らい、ず?」
「MIROC東日本支部、特務課主任、サンライズです」
えっ支部の方ですか? とは言われずに済んだ。
「あなたを救出に来ました。立てますか?」
少しは立とうと、努力はしたらしい。
モップが縦方向にのびた。
しかし、また元の位置に戻る。
「むりだ」
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