「いつ頃帰れるんだよ」

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「あと、お座りになる時は、ご自分のお部屋でしたらいいのですが……」  柔らかくも非難めいた目を、彼の方に向ける。  確かに、椅子に斜めにこしかけて、足を組んで片手は背もたれにひっかけている。 「そうですね、まっすぐお座りください」  ヘラヘラした顔で座り直しながら思う。道理でコイツらは、どこでも行儀がいいのか。 「お部屋に入ってからのご注意ですが」  まだあるのか、みたいな顔になってしまった。 「同室の方と仲良くされるのはもちろん」 「え、」  予想していなかった。マズイかもしれない。「相部屋なのかい?」  丸メガネは、また幼子を「めっ」としかる幼稚園の先生みたいな笑顔になった。 「ああ……つい癖で、ええと、相部屋なのですかい? 誰かと」  江戸っ子じゃあるまいし。自分でも思ったが、とりあえず答えてもらえた。 「ええ、つい最近入られた、アサダさんという方がいらっしゃいます。どうか仲良くお願いしますね。もちろん……」  少しだけ丸メガネの表情がかげった。 「もちろん、会話していただくのは全然かまいません、お互いの宗教観を確認しあう場として、教主さまも個人の会話は重視しておられます。ただし」  丸メガネが蛍光灯を反射して、いやな光を放った。 「修行前の過去につきましては、お互いにお明かしになりませんように」  ため息をつくようにつけ加える。 「どなたさまも、何かと辛いものを抱えていらっしゃいます。それにそういうものを吐き出す機会は、他にございますので」 「はい、分かりました」  とりあえず、殊勝にそう返事をしながらも心の内では毒づいていた。  過去について話すな、だと。  ふざけんな。  これからの計画についても、絶対話せるものか。
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