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さすがのサンライズも、げっそりした色は隠せなかった。
しかしそこにカチハラ本部長が追い打ちをかける。
ドルーピーには珍しく、気弱さがにじみ出ている。
「頼む、うちの本部にも優秀な特務リーダーは多いんだが、ナカガワ部長がぜひキミに、と言ってるんだ」
いつもいばりくさっている本部が支部に頼みごとをするのが、そんなに辛いのだろうか、汗まで噴き出しかかっている。
しかし、サンライズを指名した当のナカガワは腕組みしたまま、だまってこちらの頭上あたりを見ている。
とても頼みごとをしに来たようには見えない。
直属の上司である支部技術部長のスゲもそんな偉そうなナカガワをみて、たまりかねたように口をはさんだ。
「ナカガワさんからは、何かないんですか?」
「私から?」
ナカガワは思わせぶりな間をおいてから、組んでいた腕をほどいた。
「まあ……適任者を全所データから選んだら、候補に上がったのが、彼だ」
少なくもこの場ではサンライズのことをコイツ呼ばわりしなかった。
しかし、
「行ってもらえれば、ありがたいが」
(別に行かなくてもいいんだ、クズめ)
彼の挑戦的な目がサンライズに向けられた。
そのまま睨みつけるように彼を見ている。
「いやなら他をあたる」
「わかりました」
なぜかサンライズではなく、スゲが悲愴な顔で答えた。
「行ってくれるか?」
そう言ってから、哀しそうな目でサンライズをみる。
本部支部と違いはあるものの同じ立場の技術部長なのだが、ポチはナカガワよりずっと若く、どこか、学生のままオヤジになってしまったような頼りなさがある。
あだ名も『ポチ』というだけあって、どことなく忠犬の擬人化のようなキャラだ。とんとん拍子に出世してしまったせいか、こんな場所ではかなり居心地が悪そうだ。所詮ナカガワの敵ではない。
今日は更に一層、偉いヤツらに挟まれて落ち着かない様子だった。
サンライズは、そんなポチの濡れたような(鼻ではなく)瞳を見て、息をそっと吐き出した。
「わかりました」
結局、そうなるのだろうな、とぼんやり思う。
「頼む」
ナカガワがそう聴こえなくもない息を吐いて、また腕を組んだ。
「死ね」と言われているのとあまり変わりがない雰囲気だった。
が、隣のカチハラ本部長はそれでも、ほっとしたように少し表情を緩めた。
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