夜叉の恋

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「もう、絶対に離さない」 夜叉の切ない声。 わたしを心から抱き締めて離さない。 夜叉がここに来たということは……もしかして。 「……夜叉、まさか」 夜叉はわたしに会うために……まさか命を? そんな。 そんな。なんてことを! 「違う、俺はおまえを連れ戻してふたりで生きる。死ぬためにここに来たわけじゃない。ふたりで生きるために来た!」 そして、必ず連れ帰る! そう告げる夜叉は覚悟を決めてる。 ふたりで生きてくために迎えにきてくれたんだって。 わたしも夜叉と一緒に生きていきたい。 だから……信じるだけ。 きっと帰れるって。 「わたし、……あなたと一緒に生きていきたい」 夜叉はわたしの頬にそっとくちびるを寄せた。 「戻ったら、……覚悟しとけよ」 夜叉らしい。 強引で俺様で、そうでなくちゃ夜叉じゃない。 夜叉の腕がわたしを軽々と抱え上げた。 真っ暗な洞窟の中に、一筋の光が差してくる。 「俺にしっかり捕まってろ。死んでも離すな」 光は一瞬だけ開き、その中に夜叉はわたしを抱えて飛び込んだ。 眩くて目が開けられない。 握った夜叉の力強さに身を委ねた───
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