夜叉の恋

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その時。 ザシュッ 目の前に伸びた鬼の腕が肘から吹っ飛んで、腕のもがれた鬼がのたうち回って床に転がった。 「誰が俺のものに触れていいと言った。この女は俺の獲物だぞ」 青みがかった銀の瞳が燃える怒りに染まってる。 「ヒッ、タ、タスケテくれ」 助けを乞い逃げようとした鬼の首が胴体から離れ後ろに跳んだ。 鬼の頭と体は黒い靄になるとそのまま霧散した。 「……夜叉」 「怖かったな……遅くなった」 もう少しで体を引き千切られ喰われそうだった。 震えが止まらない。 「悪かった……」 夜叉の腕が伸びて楡磋を包み込んだ。 その腕が優しくて涙が溢れてくる。 夜叉は人ではない。 だけどそれでもいい。 夜叉は震えが止まるまでずっと腕の中に居させてくれた。 その優しさが今の楡磋のすべてだった───
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