第3章 風の城の住人たち

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「真面目で、お堅いナナト姫。魔神族は、人間の生体エネルギーを糧にしなければ、生きていけないんだよ。妥当な手段だと思うけど? 七都さんの世界の吸血鬼みたいに、一方的に血を取るために、人間を殺しまくってるわけじゃないぞ。ギブアンドテイクだ」  ナチグロ=ロビンが、意地悪っぽく言う。  アヌヴィムは、魔神族と取引をする人間たち。  エディシルを提供する代償として、魔神族から魔法や宝石や武器を与えられる。  そして、七都が会ったこの城のアヌヴィムたちは、そういう物の代わりに、この城での生活を望んだのだ。 「でも、あの人たち、私が今まで会ってきたアヌヴィムとは、全然違う……」 「ふうん? どう違う?」 「なんて言うか……うまく表現できないけど……。ちゃんと生きていない。私が会ったアヌヴィムさんたちは、みんな自分でしっかりと生きてたよ。普通に人間として感情が豊かだったし、親切に私に接してくれたし、心配してくれたし、悩んでたし、アヌヴィムらしからぬ行動を取ってたし、アヌヴィムとしてのプライドも持ってた。自分のことだけじゃなく、他人のことも考えてた。自分の世界に閉じこもって、鍵をかけてなんていなかった」 「アヌヴィムにも、いろいろいるからね。じゃあ、最後にあのニセ貴婦人たちに会いに行こうか。彼女たちに会えば、この城の住人全員と会うことになる。昔はもっといたんだけどね。ずううっと下手な絵を描き続けるアヌヴィムとか、決して上達しない楽器を演奏し続けるアヌヴィムとか。ほかにもいっぱいいたけど、もうあんまり覚えてないな」 「その人たちは、寿命を全うしたの?」 「自分で、自分の長すぎる生活を断ち切った。この城の敷地の端っこから下に飛び降りるってパターンが多かったかな」  ナチグロ=ロビンが、何の感慨もなく答える。 「やーっぱり、七都さんの言うように、どこか間違っているそんな生活に我慢できなくなった……ってことかもしれないねえ?」  七都は、間延びした口調でのんびりと話すナチグロ=ロビンを睨んだ。
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