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神様が『お願い!』
『なぁオーレン。 お前も分かっておろうがそろそろワシもええ歳だからの。 のう、頼むから……ワシの目が黒いうちに』
じいちゃ……いや、神様が。 やけに平身低頭を決め込む時はろくでもない話になる……ということは、経験で知っている。 逃げ出そうと隙を伺いつつ後ずさりしていると、背後にただならぬ気配を感じた。
『あらぁ。 どこに行こうとしてるのかしらねオーレン? お爺様がまだお話なさってるでしょ?』
『へっ……何言ってんだ。 このジジイ、こないだ神殿の聖なる水晶球を並べて、ビリヤードの練習なんてしてやがったんだぜ。 まだまだくたばるタマじゃねーよ!』
うん、嘘は言ってない。 神様に対する態度の善し悪しは置いておいて。 姉のアオは自分の言葉で深くため息をついた。
『……お爺様。 先日水晶球にてゲートボールをなさっていた時に、あれほど厳重に注意したというのに……!』
『え~……ビリヤードなら、ゲートボールより激しく突かないからの、まあええか、と思うて……』
姉の注意を神様に引き付けてるうちに、後ろを向いて走り出そうかとしたが。 残念、姉の方が一枚上手だったようだ。 首根っこをつかまれているかのように、全然前に進めない。 なんだろう、拘束の魔法のようなものだろうか。 姉はまたひとつ、出来ることを増やしたようだ。
『オーレ~ン? まだ、お話は終わってなくってよ~?』
神様にも自分にも凄いにらみをきかせながら、姉は顔面に薄っぺらい笑顔を貼り付けたまま青筋をたてた。
『お爺様! このクソ馬鹿妹がまた脱走する前に、早く用件を言ってしまわれてください!』
クソ馬鹿……か。 姉も大概言葉が汚い(普段は猫を被っているけど)。 仕方ないといえば仕方ない、姉妹なのだから。 神様は姉の気迫に押されながらも、咳払いを一つして、自分達姉妹の顔を代わる代わる見ながら言った。
『うむ。 いつワシがくたばっても悔いが残らんようにの。 早く拝みたくてのう、……孫娘達が両女神へと成長した晴れ姿を』
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