プロローグ 契約の始まり

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プロローグ 契約の始まり

「貴女と私が良きペアになるのには、この行為は必要なことでしょう?契約に反しているかしら?」  しなやかな指先が切りすぎた前髪に触れる。入学前に張り切って自分で挑戦したのが悪かった。  花の甘い匂い、艶やかで透明な声。水瀬カリンは直接肌に触れてもいないのに、うちは顔の中心に熱が集まったのが分かった。 「キスなんてほんの一瞬のことよ。貴女は目を閉じて身を委ねていればいいわ」  これは気遣いなん?それとも、からかってんの?  彼女の真意は分からない。海の瞳からは光が感じられないから。声から感情は理解出来ないから。  怖い、という底知れない恐怖心が襲ってくる。 「大丈夫、これは契約に過ぎないわ。そこに感情なんて生々しいものはいらない。だから安心なさい」  彼女の胸元に引き寄せられ、香りが濃くなってクラクラしてしまう。不快感はないのならこれは気持ち良いに入るのだろうか? 「初心ね」  あ、笑った……。  頑なに表情を崩さない彼女が柔和に笑んだ。ほんの一瞬の出来事で、次には唇を横に結んでいる。  うちは言われるがまま瞼を閉じ、暗くなった世界でなんで自分なんかを選んだのかさえ分からず、海に飲み込まれてしまった。
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