sympathy for devil(悪魔を憐れむ歌)2

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カゲオこと影山忠男にとって、同級生の金田安男はとてつもなく鬱陶しい存在だった。 何かと自分を目の敵にして、突っかかってくる。少しだけ自分より成績がいいのと、自分より友人が多いのが気に入らないらしい。 もっとも、カゲオも友人が多い方ではなかった。金田が少なすぎるのだ。いや、皆無と言っても良かった。 クラスの中心的存在たちに媚びを売っているようだったが、まったく相手にされていなかった。 不動産屋の一人息子で、金持ちなのを自慢していた金田は、小学生時代から「俺はおまえら貧乏人とは違って、中学からは私立の名門校に通うんだ」と自慢していた。 だから、カゲオは金田が早く消えてくれるのを心の底から楽しみにしていたのだが、いつの間にか高校まで同じ学校に通っている。 金田不動産はバブル崩壊で、損失を出し、息子の学費が払えなくなったという噂があった。真偽はともかく、金田が目の前から消えてくれないのは迷惑な話だった。 家が近いので、小学生時代は集団登校でも同じ班だった。行動を共にさせられることが多くて迷惑だった。 影山と金田なので、名簿の順で前後することもあった。中一のとき、カゲオと金田は運悪く同じクラスになった。 カゲオは名簿が8番だったため、教師の目の前という特等席だった。それだけでも不運なのに、後ろに座るのが金田という最悪の席順だった。最悪の中学デビューになった。 世間ではこういうのを幼なじみや腐れ縁などと言って美化する傾向があるが、ふざけるなとカゲオは言いたい。 カゲオにとって金田は不倶戴天の敵であり、害悪であり、害虫のような存在でしかなかった。 しかも、高校3年という大事な年に、また金田と同じクラスになるという不幸が待っていた。 受験シーズンまであと少し。 今度こそは縁を切りたかった。 大学にまでつきまとわれたら地獄としか言いようがない。 それでなくても、カゲオたち第二次ベビーブーム世代は受験者人口が多く、ライバルだらけなのだ。 金田なんかにかまっている暇はなかった。 「おい、カゲオ! おまえ何をボーッとしているんだ! 怠けてないでちゃんと掃除しろ!」 今日も金田のゲスぶりは絶好調だ。 今まで掃除をサボっていたくせに、教師が見に来た途端、動き出し、それまで真面目に掃除していたカゲオに対し、まるでサボっていたかのような言い方をする。 大声でカゲオに「どけ!」と叫んだり、わざとカゲオを突き飛ばして順番を抜かしたり、弁当のおかずを奪ったり……いずれも誰かが見ている前で行い、カゲオに恥をかかせようとする。 とてつもなく、鬱陶しい男だった。 ちなみにカゲオというのは、影山忠男という名を短縮したあだ名である。 影が薄い存在というのもあるが、北陸の片田舎にある海辺町には影山姓の人間が多く、同級生にも影山という名字の人間が何人かいた。 区別するために、カゲ太、カゲ助なんて呼ばれるようになったのだ。 金田は威張っていたが、特別成績が優秀というわけでも、スポーツが得意というわけでもなかった。 こういう人間は自分より下の人間を見つけて、いたぶることで、自分のポジションを確保しようとする。 こういうふうに誰かが見ている前で「おい、カゲオ!」と、大声で偉そうに怒鳴りつけることで、俺はカゲオより優位に立つ人間なのだとアピールしていたのだ。 おかげで、周囲もカゲオを駄目な奴と捉えてしまい、クラス内での地位は低くなってしまった。
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