チャットボーイ☆ミーツボーイ

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朔也は外出が出来なくても楽しむ事ができる。映画を映画館で見なくても無料動画サイトでみればいい。旅行も旅番組を見ればその街にいるような気になれる。だから外に出たいと思わない。 人の気配、人の視線、人の声、沢山のそれらが混ざりあった喧騒が毒ガスみたいに目から耳から口から入ってくる。 外では生きていけないと言う事だ。 「サクラちゃん弁当買ってきたよ。ドア開けて」 自然とため息が溢れる。 玄関の扉を開けるとアイツがいた。 「ごめんね、これ見て」 やや、興奮ぎみにれいじが言った。 朔也にも何かのチケットである事は分かる。 「これ忘年会のビンゴで1等とったんだよ………高級温泉宿の宿泊券……露天風呂つき客室で、部屋食だって………良かったら一緒に行かない?」 れいじは目をキラキラさせながら言った。 「あんたさ、僕が外出できないの知ってて誘ってるの?」 「………でも少し外出たら気分が変わるんじゃない?」 昔、両親が引きこもり始めた朔也を口実をつけて外出させようとしていた事を思い出した。あの時、誰にも理解されてないと思った。同じ苦い思いが湧き上がってくる。 「僕はどこも悪くない……どうして気分を変えないといけないんだよ」 「ごめんね」 慌てた様子でれいじは謝ってくる。 「そういや、最近さぁチャットもしてないよね、恋人できたの?」 「………僕はサクラちゃんがいい」 こっちの顔色を伺うような言い方がいちいちムカつく。 「あんた、ゲイじゃないんだろ?脱ごうか?僕が男の体だって理解しろよ」 朔也はTシャツを脱いだ。ズボンも下着ごと脱ぎ床に落とした。 れいじは真っ赤になって顔を背ける。 「よく見ろよ興奮しないだろ?」 「やめて………そんな簡単に脱ぐな」 朔也はにじり寄ってれいじの腰を抱いた。 「いいじゃん、男同士だろ?」 れいじは 真っ赤になって目を閉じている。 反応が面白くなって更に身体を密着させる。 「サクラちゃんやめてっ…………」 れいじが朔也を突き飛ばした。体が離れ床に転がった。 「いったいなぁっっ!」 朔也がれいじを下から睨みつけた。 真っ赤な顔をそらしたままれいじが言った。 「君って本当に人の気持ち分からないんだね……ずっと引きこもってたんだから仕方ないんだけどさ……本当に可哀想…… 嫌いなら一言そう言えば分かるのに…………」 れいじは 台の上に買ってきた弁当を置いた。 「もうここには来ないから………ご飯はちゃんと食べるんだよ」 ドアがゆっくり閉まった。 カンカン鉄骨の階段を下る音が遠ざかっていく。 辺りがしんと静まり1人になった。 朔也は脱ぎ捨てた服を静かに身につけた。 引きこもってたから仕方ない? 可哀想? 人の気持ちが分からない? 言われた言葉がグルグル頭を回る。 「馬鹿にすんなっっ!!」 弁当を、さっきまで男がいた場所に投げつけた。
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