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 ――あれは昼食をどこで食べようかと、学校の敷地内をウロウロと彷徨っていた一ヶ月前。入学したてで無駄に広い敷地に顔をしかめつつ、落ち着いてものが食べられ休める場所を探していた。  人がいない方向へと進むに連れ、日当たりは悪くは無いが、人一人いない校舎裏へと着いていたようだった。 奥へ進むと(すみ)に大きな樹が一本と背の低い何本かの木が、手入れが入らず自由に生えた結果か、ボサボサになってしまっている背の高い雑草の上から見え隠れしていた。  大きな樹に惹かれるように近づくと、当たり前のように雑草が邪魔をする。躊躇うことなくガサガサと草を掻き分け進むと、大きな樹の近くに広くレンガの石畳が敷かれる庭に遭遇していた。 ブランドだと分かる草花が、手が入れられているはずが無いにも関わらず、咲き誇るさまは美しく、彼は一瞬で惹かれてしまっていた。  石畳に置かれる木製の青塗りな長ベンチ。それに合わせた同じ色の大きめな木製テーブル。  いつからあるのか分からない物ではあるが、少し剥げているだけで腐ってはいなかった。
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