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 ふと気づいたときには、その家具たちに触れ、良く見ようと鬱陶しい髪をかきあげていた。 指紋で汚れていた黒縁のダサく時代遅れな眼鏡をハンカチで拭き、顔を上げ周りを見渡すと、少し離れている位置に小さな白い小屋のような建物を見つけ近づく。  ノブに手をかけるとギギと小さく音を立てたが、鍵はかかっておらず簡単に開く。 中にはおとぎ話に出てくる魔女が跨っていそうな箒とレトロな一人がけの椅子、少し錆びついた銀色のバケツ、古そうなパッケージの雰囲気はあるが、新品と思われる袋に入った、白くきれいなタオルか雑巾のようなものがあった。  建物の横を見ると、どうやら水場まであるようだ。少し固く閉められた蛇口をひねると水が出る。 ここまで揃うと、居心地が良くここから出るのを躊躇うほどだった。  もともと交流がメインの学校のため、そこそこ勉強できるのが当たり前な私立高校。豆知識や質問以外の無駄話は一切なく分かりやすく覚えられるが、淡々と進められるため、授業で勉強する時間が短い分休み時間はなかなかに長い。
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