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『コーデリの歌』を作ると言ってから約二ヶ月が経った。季節はすっかり冬になり、狩りの季節は終わったが僕はこうして今日も狼、もといコーデリの元を訪れる。
苦しい肺でなんとか狩りの曲を吹ききった。
「⋯⋯どうだった? ごめん。感想聞く前に少し、休ませて」
「なあ、ここのところ苦しそうにしているが大丈夫なのか? 具合が悪いんじゃないか?」
「実は、息苦しくて⋯⋯。でも、大丈夫。温かくして、寝てるから」
ふと、額にふわふわとした感触を感じる。
「⋯⋯熱があるじゃないか! どうして休まなかったんだ!」
「いつも楽しみにしてくれるのが、嬉しくて。それで、つい」
思考がうまく働かない。焦点も合わなくなってきて、ぼやけてきた。
「おい! 大丈夫か!? しっかりしろ!」
「⋯⋯大丈夫。少しだけ、休むだけだから」
目を閉じる。ちょっとだけなら休めそうだ。
ふわふわと体が浮く感覚がする。まるで雲の上にいるような、そんな感覚。
「⋯⋯あれ? ここは」
見渡すと、コーデリが心配そうにキューンと鳴いている。どうやら村まで送ってくれたらしい。見つかれば危ない筈なのに。
「僕、いつの間に! ごめん、怖かったよね。⋯⋯来週まで休むことにするよ。それでも良い?」
少し残念そうな様子を見せたものの頷いてくれた。それに甘えて、しばらくは休養を取ろう。
「それじゃ、次の日曜日」
それを聞いたコーデリは、静かに村から離れる。それは、暗い雲に覆われた夜空の下での出来事だった。
窓から外を見ると、どうやら雪が降っているようだ。けれども、それを喜ぶほどの体力は残っていたなかった。
「どうしよう。一週間後に行くって言ったのに⋯⋯」
しっかり休んだ筈なのに症状が回復することはなく、むしろ悪化している。
連続した咳が体力を徐々に蝕んでいるように感じた。
ガリ、ガリガリ。
どこからか木の板を引っ掻くような音が聞こええる。いつの間にかネズミが住み着いてしまったのだろうか?
⋯⋯いや、どうやら音の仕業はネズミではないようだ。もしもネズミがいるのなら屋根裏から音がなるはずだ。しかし、いったいどこから聞こえるのだろう。
キョロキョロと見回すと、ドアが音を立てて揺れている。しばらくの思考の後急いでドアを開けた。狩りの仲間だろうか?
「大丈夫か? ⋯⋯見たところ、あまり良くなさそうだな」
「コーデリ!? ごめん、むしろ悪化してるみたいで」
「⋯⋯夜になったらさっきみたいにドアを引っ掻くからドアを開けてくれ」
「いいけど、どうして?」
聞く前にコーデリはすでに家を去っていた。怠さを感じ、布団に再び包まった。
ガリガリ、ガリ⋯⋯。
ドアを引っ掻く音が聞こえる。夕方に聞いた通りドアを開けるとコーデリはいないものの薬草や木の実が積まれていた。
「⋯⋯もしかして、これを?」
風によく聞くとされている薬草と、栄養価の高い木の実が選ばれているようだ。
「⋯⋯ありがとう」
それらを拾い集め煎じて飲むことにしよう。きっと良くなる筈だ。
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