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「ふふ。るい君、かわいい」
そんな僕を、鈴香がいつものように笑う。僕はさらに赤面し、ドアの裏に身を隠した。
「ここ三日程、るい君の姿を見ていなかったから、心配になってね。それで様子を観に来たんだけど……。ごめんね、起こしちゃって」
「いえ。それに、鈴香さんが起こしてくれなかったら、きっとお昼頃まで寝てただろうから……」
そういいながら、僕が再びドアから顔を覗かせると、
「るい君、朝苦手だもんね」
と、鈴香がクスリと笑った。
「そういえば鈴香さん、時間は……?」
「時間?」
そういって彼女が腕時計に目をやると、時刻はちょうど八時を指す少し前だった。そろそろ出なければ、遅刻する可能性がある。
「いけない!そろそろ行かないと。それじゃあるい君、いってくるわね」
「はい。いってらっしゃい」
こちらに手を振りながら、遠ざかっていく彼女の姿。それを見送った僕は、小さな笑みとともに、玄関の扉を閉めた。
こんな朝のやりとりが日常になって、もうすぐ一年。少しずつ賑やかになりながらも、穏やかに日々は過ぎていく。正直、まだ慣れないことは多い。それでもーー。
この過ぎゆく時の流れに身を委ねるのも悪くはないと、最近思うようになっていた。
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