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プロローグ
****♡Side・塩田
「ねえ、塩田ほんとに良いの?」
「今さら、なんだ」
二人は、成田空港に居た。
やっと最近、恋人らしくなってきたと思ったら、課長から飛んでもない指示がでたからだ。
──うちの会社には派閥がある。皇を社長から救いだすったって、やり方がえげつない。
うちの会社、(株)原始人の副社長こと”皇 優一”は、全身ブランドで固めた童顔で、俺様な奴だ。彼は入社したての頃、その容姿や出来の良さから、配属された営業課で先輩たちから恨まれていたらしい。
そしてある日、事件は起きる。皇は複数の先輩たちに休憩室に連れ込まれ、輪姦されそうになった。それを救い出したのが、社長。
しかしそれは全て社長の罠だったのである。社長は皇を自分のものにしたかったようだ。
だがそんな簡単に、上手くいくはずもない。
暫く何もなかったが、あることをきっかけに社長は、再び皇に手を出し始めた。皇は立場上断ることが出来ない。そんな彼を課長は塩田に、救えというのだ。それというもの皇の想い人が、塩田だから。
──俺に、皇を抱けと。どういうことだ、一体。
「俺は、紀夫さえいればいい」
「とは言え、何処に?」
「実家だ」
「へ?」
塩田は課長に対し、
『そんなこと聞けるか!』
と言って、辞表を叩きつけた。
自分には、電車 紀夫という恋人がいる。彼を傷つけるようなことは出来ない。
「俺は、紀夫と結婚することにした」
「え」
「親に逢わせる。ついて来い」
「て、電車で⁈」
成田には来たものの、塩田は電車に乗り込む。
「何でわざわざここまで来たの?」
「新婚旅行の下見だ」
「空港の?」
「何か、文句があるのか?」
ツンツンしている塩田に、彼はフッと笑うと塩田の手を掴んだ。
「いこっか」
といって。
──俺は紀夫が好きだ。自信がなくて、優しくて、少し腹黒い彼が。可愛い顔をしていて、笑うと可愛くてバリタチな彼が。
「塩田の両親ってどんな感じ? 怖い?」
と電車に聞かれ、
「結婚と聞けば、五発は殴られる」
と答えれば、
「そんな、殴ってくるの? ちょっと嫌なんだけど」
「殴り返せば大丈夫だ」
「全然大丈夫じゃないよ、それ」
と、眉をよせる。
──嘘だけど。
「はあ、なんて挨拶しよう」
と、ため息をつく彼。
「適当で良いだろ」
「いや、適当とか。殴られるじゃないかよ」
「避ければいいだろ」
「そんな、雑な……」
困り顔の彼。繋いだ手が温かい。
「仕事、どうする?」
と、現実的な話をする彼。
「探すしかないな。しばらくは貯えがあるから、なんとかなる」
「頑張って探すよ」
君となら、何処だって。
何処へでも行ける。
君がいれば、毎日が幸せ。
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