1話【振り回されるのは、いつものこと】

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****♡Side・課長 ──まったく、何をやっているんだ、アイツらは。  課長は電話を切ると、ため息をつく。先日、塩田に無茶な指令を出したら、突っぱねられた上に辞表を叩きつけられた。 ──辞めるこた、ないだろうよ。  彼らの辞表は、課長のデスクの中にしまってある。優秀な部下をこんなことで失うわけにはいかない。 「で、二人がどうしたって?」 と、パソコンに向かっていた、副社長。 「なあ、今度デートしない?」 と、その横で懲りずに副社長を口説こうとしている、総括。 「皇さんに触らないでください!」 と、向かい側から声を上げる、社長秘書の神流川。  苦情係は今、泥沼だ。いつもなら電話で悪質クレーマーの相手をしているはずの塩田がいない。  代わりに板井が相手をしているのだが、 『ちょっと! 塩田ちゃんがいないってどういうこと!』 と、塩田がいないことで苦情を言われていた。  無茶苦茶だ。 「もー……課長、なんとかしてくださいよ」  電話を切った板井は涙目で訴えてくる。 ──どうにかできるなら、とっくにしている。  課長は少し早まったことをしたと思っていた。拒否するにしても、会社は辞めないと思っていたのである。  二人が会社を休み、副社長は自ら手伝いに来てくれた。そこに苦情係を覗きに来た総括が加わり、副社長に想いを寄せる神流川が乱入。なんだか賑やかなことになっている。 ──こうなったら、副社長と神流川をくっつけるか。  課長は新しい作戦を考えていた。神流川は副社長の二個上。年も近いし、神流川は包容力もある。問題はあるが。それはいつまで経っても副社長のことを諦められない、総括のことだ。彼が原因で社長は暴挙に出ている。 「いい加減にしろ。俺様は、お前とデートなどする気は……」 「そうですよ! 皇さんは俺と出かけるんです」 「え?」 と、神流川に目をやる皇。  強引な二人のせいで、皇は面倒なことに巻き込まれていた。 「ちょっ……何言ってるんだ。神流川」  向かい側の神流川は立ち上がると、皇の元へ。 「皇さん。俺は本気です。こんな人なんか止めて、俺と付き合って下さい」 「いや、総括とはなんでもな……」  たじろく皇に対し、 「俺と不倫しよう、皇」 と、迫る総括。 ──カオスだな。 「あなた、既婚者でしょう。皇さんのことは諦めてください」 と、神流川が皇の腰を引き寄せる。 「ちょ……俺様の意志は無視か?」 「塩田さんは狙っても無駄です」  神流川の言葉に、さすがの皇も黙った。 「塩田さんのことなんて、俺が忘れさせてあげますよ」  昼ドラさながらの展開に、課長はため息を漏らす。  すると、 「いい加減に、ちゃんと仕事してください!」 と、板井が三人を叱る。 ──さすが、板井。
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