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****♡Side・課長
──まったく、何をやっているんだ、アイツらは。
課長は電話を切ると、ため息をつく。先日、塩田に無茶な指令を出したら、突っぱねられた上に辞表を叩きつけられた。
──辞めるこた、ないだろうよ。
彼らの辞表は、課長のデスクの中にしまってある。優秀な部下をこんなことで失うわけにはいかない。
「で、二人がどうしたって?」
と、パソコンに向かっていた、副社長。
「なあ、今度デートしない?」
と、その横で懲りずに副社長を口説こうとしている、総括。
「皇さんに触らないでください!」
と、向かい側から声を上げる、社長秘書の神流川。
苦情係は今、泥沼だ。いつもなら電話で悪質クレーマーの相手をしているはずの塩田がいない。
代わりに板井が相手をしているのだが、
『ちょっと! 塩田ちゃんがいないってどういうこと!』
と、塩田がいないことで苦情を言われていた。
無茶苦茶だ。
「もー……課長、なんとかしてくださいよ」
電話を切った板井は涙目で訴えてくる。
──どうにかできるなら、とっくにしている。
課長は少し早まったことをしたと思っていた。拒否するにしても、会社は辞めないと思っていたのである。
二人が会社を休み、副社長は自ら手伝いに来てくれた。そこに苦情係を覗きに来た総括が加わり、副社長に想いを寄せる神流川が乱入。なんだか賑やかなことになっている。
──こうなったら、副社長と神流川をくっつけるか。
課長は新しい作戦を考えていた。神流川は副社長の二個上。年も近いし、神流川は包容力もある。問題はあるが。それはいつまで経っても副社長のことを諦められない、総括のことだ。彼が原因で社長は暴挙に出ている。
「いい加減にしろ。俺様は、お前とデートなどする気は……」
「そうですよ! 皇さんは俺と出かけるんです」
「え?」
と、神流川に目をやる皇。
強引な二人のせいで、皇は面倒なことに巻き込まれていた。
「ちょっ……何言ってるんだ。神流川」
向かい側の神流川は立ち上がると、皇の元へ。
「皇さん。俺は本気です。こんな人なんか止めて、俺と付き合って下さい」
「いや、総括とはなんでもな……」
たじろく皇に対し、
「俺と不倫しよう、皇」
と、迫る総括。
──カオスだな。
「あなた、既婚者でしょう。皇さんのことは諦めてください」
と、神流川が皇の腰を引き寄せる。
「ちょ……俺様の意志は無視か?」
「塩田さんは狙っても無駄です」
神流川の言葉に、さすがの皇も黙った。
「塩田さんのことなんて、俺が忘れさせてあげますよ」
昼ドラさながらの展開に、課長はため息を漏らす。
すると、
「いい加減に、ちゃんと仕事してください!」
と、板井が三人を叱る。
──さすが、板井。
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