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そんなこんなで放課後になってしまった。僕自身も、彼女に告白された事など忘れて帰路に着こうと玄関で靴を履き替えていた。そんな時だった。
「クソ眼鏡」
「え?」
左頬に強い痛みが走った。グラついてそのまま僕は倒れた。殴られたんだ。口の中に鉄の味が広がっていくのが分かる。
「お前、璃子と二人きりで図書室で何してたんだ?」
「な、何もしていませんけど……」
何故、彼は怒ってるんだろう。僕には全く理由が分からなかった。確かに、鈴原さんとは同じ図書室にいた事は間違いない。あ、そういえば告白されたんだった。
「璃子に近づくなクソ陰キャ、分かったか?」
「別に近づいてなんて……」
「お前の言い訳なんてどうでもいいんだよ!」
やばい、また殴られる。そう思った時だった。
「何してんの……?」
「うわぁ……健太、あんた……」
鈴原さんとその友達が立っていた。
「璃子、これは……」
鈴原さんは、健太と呼ばれた僕を殴った生徒を突き飛ばして僕を庇う様に抱きしめた。ごめんなさい、めちゃくちゃ良い匂いします。そしてめちゃくちゃ柔らかいです。
「璃子、なんでそんな奴の事……!」
「健太、もう二度とあたしの前に顔見せないで」
「璃子……! 俺はお前の事が……!」
「……」
「っち、分かったよ……」
彼はきっと鈴原さんを好きだったんだろう。なんとなくだけど、僕にもそれは分かった。でも、色々やり方を間違えてしまったんだ。彼の後ろ姿は悲しそう見えた。
「ヒロ、立てる?」
「大丈夫です」
「璃子、あたし先帰るね。健太はあとでフォローしとくわー」
「うん」
鈴原さんの友人は、彼を追いかけて行ってしまった。仲間思いなんだな。
「あたしのせいだね……」
「違いますよ。僕が弱かったから殴られただけです。鈴原さんのせいじゃないです」
「ヒロの家ってどこ?」
「え?」
「送ってってあげるって言ってんの」
いやいやいやいや。ちょっと殴られたくらいで大袈裟な、とは言えなかった。それは鈴原さんが泣きそうな顔をしていたからだ。
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