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ヤンな彼女
「げっ!」
この時、僕から出た言葉はそのままの意味で後悔を示していた。誰もいないはずだった放課後の図書室に、小さく寝息を立てて明らかに校則違反であろう金色に染め上げられた長い髪の毛が大きな机の上にあった。
「んあ?」
寝ぼけ眼で此方を見た彼女に、やばいと思った僕は廊下に出て開けた扉を閉めようとしたが、焦っていたせいで思い切り扉に足をぶつけて大きな音を立ててしまう。
「あ、やっぱり来た」
何だろう。彼女はどうやら僕がここに来る事を知っていたような口振りだ。
「図書室ってさあ、眠くなるよね」
「は、はぁ……」
僕は彼女の名前を知っている。
鈴原璃子。
彼女は、この学校の問題児だ。校則違反である染髪、ピアス、スカートの丈の長さ、出したらきりがないので割愛するが、校則違反をとにかくしている女子生徒だ。
胸元まであろう金色の髪の毛を巻いて緩いウェーブをかけている。そして切長の目、まんまギャルとか不良とかそういう部類だ。
「で、あたしは弘を待ってた。あたしさ、待たされんの嫌いなんだよね。メッセ見た?」
「見たけど……」
「んじゃ、今日はヒロの家いこ?」
「ちょっまってよ。いくら付き合ってるにしても」
「何? 彼女が彼氏の家行ったら駄目なの? てかさ、今日他の女と話してたしょ? あれ誰?」
「え? あれは友達だけど」
「ふーん。まぁ、いいや。早く家いこ」
実は、彼女と僕は交際している。それは、あいまいな返事をしてしまったが為に、どうやら彼女は僕と付き合っている事にしてしまったらしい。
「でも、璃子さん」
「璃子」
「え?」
「あのさ、彼女をさん付けして呼ぶ彼氏がどこにいるっての?」
「う、うん」
「ん」
彼女は手を僕に向けて差し出す。これは、手を繋げと言っているのだ。女の子と手を繋いで歩いて帰るなんて一生来ないと思っていたが、まさかこんな形で実現しようとは思わなかった。
「でも僕の手は汗で……」
「だから何? 繋げって言ってんの。別にそんなの気にしないから」
僕から見ても彼女は美人だしスタイルもすごく良い。何故、わざわざ僕を選んだのか未だに分からない程に。
「今日、泊まってって良い?」
「えあ!?」
「何、変な声だして。明日学校休みっしょ? ヒロ、一人暮らしだし、どうせちゃんとメッセも返さないからさ。浮気しないようにね?」
璃子は、束縛が強めだ。そんな事しなくても、僕が女性に持て囃される事は無いというのに。浮気なんてするはずが無い。
「もしかして、何か期待してる?」
「え?」
「目線がここに向いてるからさ」
璃子は僕の視線を自分の胸元へと指を向けた。
「したいなら言えよ。てか、あんたに処女あげたんだから言いたい事わかるっしょ?」
暗に責任取れよと言っているのだ。確かに、僕の知識が当たっているならば彼女は初めてだった。
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