第一詠唱 はじめましては突然に

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「マジであり得ない……あれは」 飲み代としては見たこともない金額が記載されており、飲みすぎて頭のネジがまだ飛んでいるのかと疑ったほどだった。 「監視カメラも無ければスタッフも顔を覚えてないとか、ツイてないねー、そりゃ」 幼馴染の拓斗(たくと)が電話越しでも半笑いしているのが分かる。 「笑い事じゃないっての。諭吉が何人消えたと思ってる」 「そうだな、だいたい五人くらいか?」 「その倍以上だ!」 おお、と驚愕の声が上がる。 「冗談じゃないぜ、ほんと」 「そうだな、プー太郎になったお前からすればかなりの大金だよな。 ただ、被害届出すにしても何も証明が出来ないとなると、詰んでるとしか言えない」 「お前、そこら辺もうちょっと言い方ってものがあるだろ……」 「まあ、今度飯くらい奢ってやるよ。 んじゃ、俺はこれからアポあるからまたな」 電話が切れると、蓮は無意識のうちに公園へとやって来ていた。 ふと、どこからともなくやってきた一羽のカラスが、地面に落ちたポリ袋の中を(ついば)んでいる。 やがて中から食べ物の一部を(くわ)えると、そのまま飛び去っていった。 「ゴミ漁るようになったら、いよいよ俺の人間としての尊厳は地に落ちるな」 空から地上へと目を戻すと、目の前で横たわる女性の姿があった。 腰まで伸ばした鮮やかな緋色の髪。 真っ白な長袖のシャツにチェック柄のスカートを履いている。 「うわっ!?」 思わずスマホを落とし、蓮は大きく仰反った。
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