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「マジであり得ない……あれは」
飲み代としては見たこともない金額が記載されており、飲みすぎて頭のネジがまだ飛んでいるのかと疑ったほどだった。
「監視カメラも無ければスタッフも顔を覚えてないとか、ツイてないねー、そりゃ」
幼馴染の拓斗が電話越しでも半笑いしているのが分かる。
「笑い事じゃないっての。諭吉が何人消えたと思ってる」
「そうだな、だいたい五人くらいか?」
「その倍以上だ!」
おお、と驚愕の声が上がる。
「冗談じゃないぜ、ほんと」
「そうだな、プー太郎になったお前からすればかなりの大金だよな。
ただ、被害届出すにしても何も証明が出来ないとなると、詰んでるとしか言えない」
「お前、そこら辺もうちょっと言い方ってものがあるだろ……」
「まあ、今度飯くらい奢ってやるよ。
んじゃ、俺はこれからアポあるからまたな」
電話が切れると、蓮は無意識のうちに公園へとやって来ていた。
ふと、どこからともなくやってきた一羽のカラスが、地面に落ちたポリ袋の中を啄んでいる。
やがて中から食べ物の一部を咥えると、そのまま飛び去っていった。
「ゴミ漁るようになったら、いよいよ俺の人間としての尊厳は地に落ちるな」
空から地上へと目を戻すと、目の前で横たわる女性の姿があった。
腰まで伸ばした鮮やかな緋色の髪。
真っ白な長袖のシャツにチェック柄のスカートを履いている。
「うわっ!?」
思わずスマホを落とし、蓮は大きく仰反った。
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