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「なんや知らんけど、おもろいことになっとるねぇ」
二人の間に入るように、ふらりと現れた着物の少女を見て、女は驚いたような表情を浮かべる。
「千百合!無事でしたか!」
「シュナりんも。でー、それ誰なん?」
「気をつけて下さい。無抵抗な女性に手を掛けるような、凶悪非道な変態です」
蓮の顔を指差し、シュナと呼ばれた女は恨みの凝縮した目を向けてくる。
「だから誤解だって!」
「あなたは黙っていて下さい!」
火花さえ散りそうな両者の間で、千百合が急に吹き出した。
「何ですか……?」
「いや、シュナりんが初対面の相手にここまで毒吐けるの、おもろいなぁって。
おらへんやん、“向こう”にはそういう相方」
「そ、それと今の状況は話が別です!」
怒りの冷め止まないシュナを、まあまあと千百合は宥める。
「そないしても、あんた、どっかで会うたことある気がするなぁ」
顎に手を当て、猫のように丸い目で蓮を見上げてくる。
肩まで流れる真っ白な髪は絹糸のように美しい。
歳は十六前後だろうか。
少なくともシュナとは姉妹に見えない。
「悪いが俺は君のことを知らない。とりあえず、もう行くから」
これ以上関わっているとなにやら面倒なことになりそうだ。
蓮は離れようとするが、足が前に進まない。
「あ、あれ!?」
「悪い思うとるなら、逃がすわけにはいかへんよねぇ」
フフ、と千百合は意地悪そうな笑みを口元に浮かべていた。
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