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蓮は深く息を吸い込み、足に力を入れる。
漫画では主人公が技を繰り出したりするところだが、現実はそうはいかない。
「なんなんだ、これ!?足が地面にくっついて、全く動かねぇ!」
朝霧蓮は一般人だ。
そこそこの学力、運動力はあっても超人的な力は備わっていなかった。
「シュナりん、ウチ良いこと思い付いたんよ。こっち来て耳貸してえな」
千百合はシュナを手招きし、耳打ちを始める。
「……えぇ!?でも、それは……」
「ええやん、こっちには理由あるし。
ほんでな、──で、──をして──」
何が起きているのかさっぱり分からないが、どうやら千百合の仕業らしい。
そういえば、テレビ番組で催眠術の特集を観たことがある。
催眠術師を名乗る胡散臭そうな男が、ぶつぶつと呟きながら他者の頭に触れると、触れられた者が動けなくなるというものだ。
「まさか、なぁ……」
わざとらしくチラチラと見てくる千百合の視線が非常に気になるが、触れられた感覚はなかった。
あるいは上位者ともなれば触れる必要すらなくなるのだろうか。
「なんや聞きたそうな顔しとるねぇ」
シュナとの会話を終え、再び千百合が近づいてくる。
「解いてほしい?」
「……やっぱり俺に何かしたんだな。さっさと解いてくれ」
「そやねえ。なら、ウチから条件を提案させてもらうわ」
「は、条件?」
「おっと、その前にこれをせなアカンかった」
千百合は袖口から数珠のようなものを取り出すと、蓮の左手に付けた。
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